Research Question is the most important for your life

以下の文章は、英語英文学科4回生の卒業論文集(SEE; Studies in English Education in Japan)の刊行に寄せたものです。この1年どのような事をゼミの中で追求しようとしたかという点を明らかにできるように気を使い書きました。尚、この ようなゼミ論文集を作成することについては、本学生活科学部の村瀬学先生に貴重なアドバイスをいただきました。インターネット上ですが、お礼申し上げま す。

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ま ず、この卒業論文集の完成にあたり、最後まで奮闘努力した10名のゼミのメンバーに心よりお祝いを申し上げたいと思います。最後までと書きましたが、1月 にはいってからの追い込みは大変でした(夜の10時くらいになることもありましたね)が、集中力はさすが、と感心させられるものがありました(もっとも今 までさぼっていたつけがまわってきたと誰かが言っていましたが)。
今年のゼミは、『英語教育とインターネット』をテーマにスタートしましたが、正直なところなかなかうまく進展しませんでした。その原因はいくつかありま すが、最大のものは1998年特に厳しかった就職戦線といえるでしょう。新聞記事でも’大学のゼミ開店休業’といった見出しが出ていたように、なかなか落 ち着いて学習・研究できる環境ではなかったのが、今年特に前期の実状だったと思います。

テキストは、Vivian Cook (1991). Second Language Learning and Language Teaching. Arnold社刊、を使用し、学習動機(Motivation)の章を中心にレポーターを決め、ディスカッションをすすめていきました。ここで、 Motivationに焦点を当てたのは、日本というEFL・英語学習環境下では、「なぜ英語を勉強するのか」という理由が希薄になりがちであり、また言 語学習の成否を握るキーになるだろう、と考えたからでした。ただ、読むだけでなく実際に自分達でどのような英語学習の動機付けがあるのか、検討し各自が考 えたものを持ち寄ることにより、55項目からなるリスト(Motivation Inventory for Language Learning Version 1.0/ http://202.11.196.79/millenglish.html よりダウンロード可)を作成することができました。これを共同研究としてまとめ上げることを目標に、夏休みには、各自30名のデータを取るべく調査に取り 組みました。10月からの後期のゼミでは、エクセルを使用したデータの分析方法(平均値、分散、frequencyなどの記述統計)を学びながら、共同研 究のデータを分担しながら分析し、記述という形でまとめていきました。このコンピュータ利用に関しては、各自の今までのコンピュータ使用経験、知識、技能 の差もあり、限られた時間の中で理解困難な部分も多々あったと思います。また、インターネット(特にホームページによる情報の発信)を活用しながら英語学 習への利用方法を検討しようと計画していましたが、実際にホームページを立ち上げることはできたものの、十分な情報を載せるところまではできませんでし た。

一方、各自の個人研究に関しては、夏休み前にどのようなテーマで取り組むかについて検討・発表し、夏休みに関連する文献を読みすすめました。その後、各自 で研究を進め(たはず)、12月には、最終発表として自分の卒論のコンセプトをひとり30分程度で発表、質疑応答をしたわけですが、発表に関してもOHP を使うなど単にハンドアウトを配るだけではない工夫がありました。その後、個人指導の後、紆余曲折を経て卒論の完成となったわけです。

最初にも申し述べましたように、30ページ以上の論を展開するのは、なかなか大変なものです。みなさんの論文にペンを入れながら、論理の展開がおかしい、 文の趣旨がわかりにくい、何が言いたいの?などと、厳しい言葉をあびせましたが、実はそれらは私自身が論文を書く際にいつも悩んでいる点でもあります。し かしながら、大変なことではありますが、このような体験を人生の中で一度は経験しておくことは重要だと思います。1995年に同志社女子大学に入学されて 以来、4年間さまざまな形で学び、考えたことを文字にすることによって、ぼんやりとあった考えが明確な形になったはずです。なんとなく分かっていること と、はっきりと文字に表すことには雲泥の差があります。今回のいわば産みの苦しみは、そのなんとなくわかっているものをはっきりとしたものに変容するため の苦悩だったと私は考えています。

ここで、各論文の紹介を簡略にしておきたいと思います。福島論文は、学習環境の要因をつぶさに比較検討しながら日本において早期に英語学習をはじめるかど うかを論じたものですが、中途半端にはじめるよりは現在の中・高校の英語教育の改善に力を注ぐべきである、という結論にうまく結びついています。林田論文 は、英語を専門としない人にとっての英語学習とは何かというユニークな視点から書かれたもので、特に本人の中学、高校時代の英語学習体験の記述に目を見張 るものがあります。垣井論文は、明治から2002年の新学習指導要領までの膨大な資料をうまく整理しながら、日本人にとって英語を学ぶ意味を国際理解とい う視点から冷静に鋭く論じた秀作です。資料の整理の方法が特に優れています。神矢論文は、留学の効果を、学ぶ環境、教師と学習者の関係、学習者の情意的側 面の3点から多角的に論じたもので、結論で述べられている留学の効果の秘訣に説得力が感じられます。特に、経験を通して学ぶことは日本でも可能としている 点は、卓越した指摘です。木下論文は、小学校からの英語教育に過大な期待をすることなく、きっかけとしてとらえるべきだということを論じたもので、小学校 の実験校の見学による記述に説得力があります。このように実際の教育の現状を知り述べることは重要なことです。光城論文は、日本人が苦手だといわれている 英語の発音に取り組んだもので、発音とリスニングの能力に関連性があるのではないか、というユニークな論を展開しています。聞き取り調査は大変な作業と膨 大な時間を伴いますが、これらの記述が説得力を増しています。佐藤論文は、英語嫌いがなぜうまれるのかという点について、教師と生徒の認識の差という視点 から鋭く切り込んでいます。特に、教師の影響力が大きいことをグラフなどを使いながら調査研究からうまく論じています。多喜論文は、インターネットの教育 への応用可能性に関して、現在の教育の問題点を列挙しながら、インターネットで克服できるかどうかについて論じ、インターネットに多大の期待をしすぎない ことを警告しています。具体的に例をあげながら精緻な記述が光る好論文です。津田論文は、こどもが英会話教室など習い事などをすることに関し、親の認識を 問うたもので、子を持つ母親とそうでないものとの比較をしています。着眼点に光るものがあります。最後の山本論文は、6年以上英語を学んでなお、英語がで きないのはなぜか、という点に関し、総学習時間という視点から論じたもので、英語を長く学習しているが、決して十分な時間ではないことを、諸外国との比較 を通し展開しています。この発想はもちろんのこと、E-maiなどを使ったデータ収集にも目を見張るものがあります。

このゼミは、1998年4月から1999年の1月までの約1年間のものですが、実際には1997年4月から「言語研究・」をPre-seminar(福島 加代子、林田史、垣井理子、神矢京子、佐藤敬子、澤田恵美、多田美佐子、山本真由美の8名)としてスタートしています(さらにこのPre-seminar は、「日本における英語教育」をテーマに60名で取り組んだ1996年の言語研究2を下敷きとしている)。その後、4回生で、澤田、多田が抜け、木下恵美 子、光城彩子、多喜千恵、津田優子、米倉真央が加わりました。

この2年間、常に私が言い続けてきたことは、「あなたのResearch Questionは何か?」ということでした。Research Questionとは研究上の問題意識とでもいうものですが、この意識を持つことはこれからみなさんが生きていく上で何よりも重要になると思います。 「太った豚よりも痩せたソクラテスになれ」とはある有名な大学の学長の言葉ですが、このリサーチ・クエスチョンは、ソクラテスのように考えるための食材と でもいうべきものです。もちろん、英語教育研究など研究に関わらず、自分が何かに関心を抱き、追求することが大切なのです。論文を書きながら、C258 で、なにか発明をして特許でお金をもうけたいな、ということを話していたことがありました(やっぱり狙い目は、海苔が切れないおにぎりの包装ですよ)。こ れもまたResearch Questionの一つだと思います。むずかしく考える必要はありません。ただ、自分が疑問に思うものを大切にし、それを解決する努力をすることです。そ して、Research Questionがいくつかたまってきたとき、自分の生き甲斐であるとか、生きる方向性、すなわちLIFE WORKが見えてくるのではないか、と私は考えています。それは、専業主婦にももちろん当てはまります。そのために、どんなにはたからはしょうもなく見え るようなことでも、大事に自分のリサーチ・クエスチョンの卵を温めることをしたいものです。

この論文集は、SEEと名付けられました。Studies in English Education in Japanの頭文字を取ったものです。と同時に、さまざまな事象を問題意識をもってみよう、という気持ちも込められています。”This is the beginning of our beautiful friendship.”とは映画『カサブランカ』の名言ですが、このSEEはみなさんを若本ゼミ第1期生・出発点として、徐々に成長していくことと思います。

この2年間みなさんと共に学ぶことができて、幸せでした。卒業しても、どうぞ共に学んだ友達や大学、そして若本ゼミのことを大切にしてください。ありがとう。

(1999 3.10)

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