オックスフォード通信(324/41)How to lose a country?

本の著者自らが来られるということで超満員の講演会に行ってきました

オックスフォードのヨーロッパ研究所(オックスフォードには本当に数多くの研究所があって、恐らく全世界が研究できる体制になっているのではないかと疑いたくなるくらいです)主宰ということもあり、Discussantant(指定討論者)もフランスなどヨーロッパ各国から選ばれていました(イギリス人は1/3だけ?)。

トルコの現状を前提に書かれた小説( £10の格安で購入させて頂きました)を元にした講演会というよりは座談会だったのですが、話は ポピュリスムからブレグジット、移民、宗教と幅広いトピックについて議論されました。その中でもポピュリスムとブレグジットにどうしても話が集中するのですが「どうして人間はそれほど愚かになれるのか?」「どうして愚かな考えに人気があつまってしまうのか?」という言葉が印象的です。なぜイギリスがEUから脱退しなければならないのか、今から振り返ってみると、移民問題はあったにせよ、確固とした理由を思い出すことが難しい状況です。どうしてEU離脱の国民投票の際にボリスジョンソンのようなポピュリストに賢明であるはずのイギリス国民が扇動されてしまったのか(座談会ではここまでは言及されていません)。それは第2次世界大戦における反省とよく似たところがあるのがビックリです。

質疑応答の中で移民問題についての質問があったのですが、それに対するEceさんの回答がふるっていました。「・・・ホームという概念は以前よりもずっと流動的で幻想的なものになっているのではないか。イスと同じようなイメージになってきているのではないか。空いているイスに座るだけでそのイスは世界のどこにあってもいい。ランド(=土地)と一対一の関係が崩れてきているのでは。移民というとイギリスへの移民ばかりが問題視されるけれど、イギリス国民もまたEU諸国や世界各国に移民している。今一度、Homeという概念を再定義する必要があるのではないだろうか」うーん、確かになあ、としばらく考え込んでしまう提案でした。

と同時に、文学はこういうことのためにあるのだなと思いました。正直なところ、文学は古来から各国でリベラルアーツの根幹に据えられてきているのに、なかなかその文学の現代的な意味や価値を認識させてくれる文学者にそれほど多く出会ってこなかったので(すいません)、小説をもとにこのような議論が展開されるのを目の当たりにすると、文学はやはりすごいと思わざるをえません。虚構の世界を作り上げる意味は現実を議論するためにある、のではないかと思いました。

指定討論者の一人が「Eceさんは怒ると笑うよね」と言っておられたのも印象的でした。怒ると怒るのではなくて笑い飛ばす方がインパクトがあります。

2時間で読めるよ、といわれていましたので、週末、ダブリンへ行く機内で読んでみたいと思います。

★今回の教訓:それにしてもヨーロッパの人々は奥深く、知恵があると思う。今回のオックスフォード滞在でイギリス人やイギリスの文化・風土にも大いに感銘を受けたが、それ以上にヨーロッパという存在に目を開かされる場面が多かったように思う。改めてヨーロッパについてもっと深く知りたいと思う。

(2019.2.14)

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