一番好きな映画

今日、5月15日は、沖縄本土復帰35周年の記念日、そして京都三大祭りの一つ葵祭の日ですが、今日は映画の話からはじめたいと思います。

みなさんは一番好きな映画は何ですか?と聞かれたらどうお答えになりますか?きっとたくさんの映画がその候補として浮かんでくることでしょう。私も忙しい毎日ですが、映画をよく見る方です。先日もスパイダーマン3を見てきました。どのような映画を見てもその映画から学ぶことは多くあります。

私がもしどの映画が一番好きですか?と聞かれたなら、好きな映画の一つとして山田洋二監督の「同胞」を挙げるでしょう。山田洋二さんというと「寅さんシリーズ」で有名ですが、それ以外にも「幸せの黄色いハンカチ」「遙かなる山の呼び声」や「学校」など数多くの素晴らしい映画を制作しています。

1.「同胞」の舞台は、岩手県松尾村という農村。寺尾あきら演ずる主人公の高志はこの村の青年団長で、酪農を営んでいます。その松尾村を一人の女性・河野さんが訪れます。彼女は東京の統一劇場の勧誘・オルグとして、この村でミュージカル「ふるさと」公演を青年団主催でやってみないか、とすすめにきます。公演の費用が65万円。

青年団の幹部は、みな二の足を踏みます。もし赤字が出たら、どうしよう?赤字が出るかもしれない。毎晩、会合を重ねますが、結論が出ません。そのような中で、同じ酪農を営む博志が言います。

2.「失敗するかもしれない、でも失敗を恐れてやらなければ、もうそれは失敗しているのと同じだ。失敗を恐れて取り組まないよりは、思い切ってやって失敗したほうがいい。酪農も同じだ」

私は何度もこの映画を見ていますが、見るたびにこの場面で心の中で「そうだ、そうだ」と言ってしまいます。このようなチャレンジ精神、パイオニア精神、大切だと思います。

3.夏、公演の時が来ます。目標六五○枚の切符はなかなか売れません。青年団は、作戦を変更し、仕事が終わってから夜、一件一件各家を回ってようやく売り切ります。

トラブルも発生します。公演三日前になって、会場に予定されていた中学校の体育館が、有料の催物には貸せない、と校長に断わられてしまうのですね。校長の答は変らない。河野さんは遂に「無料ならいいんですね」と無謀とも思える提案をします。河野さんは、「自分達は金儲けのために芝居をしているわけではない、無料で公演するのは苦しいけれど、芝居を楽しみにしている人たちのために中止することはできない」、と言って校長室を出ます。「今回に限り特別に許可する」、という校長の許可を聞いたのは、みんなが校門を出てすぐでした。青年団が小躍りでその喜びを表します。

この映画の楽しいのは、今は亡き渥美清など寅さんシリーズに出てくるレギュラーが所々に顔を出すところにもあります。

4.さて、公演当日。この公演自体は、統一劇場の「ふるさと」というミュージカルがダイジェストでそのまま挿入されています。テーマは、タイトル通り、ふるさとのありがたさ、そしてそのふるさとの農業。農業をやめ、土地を売ってしまった人たちの悲しみ、ふるさとのお祭りの楽しさ、ふるさとが人々にとってどれほど心の支えとなっているのかが切々と伝わってきます。この公演自体、実際に松尾村で上演してそのライブが映画になっているのですが、このミュージカルに実際に涙するお年寄りの姿も印象的です。

青年団の奮闘で、この公演は大成功を収めます。

そして、映画のラストシーンです。公演が終わって、3ヵ月後、秋、稲刈りのシーズン。主人公の高志が河野さんに手紙を送ります。寺尾聡演じる高志の声で次のように読み上げられます。

「いま、稲刈りを愛ちゃんが手伝いに来てくれています。そしていつもあの忙しかったあの公演前のことを懐かしく話し合っています。なんであんな大変なことが僕達にできたのか、不思議な気がします。でも愛ちゃんは言います。幸せって、ひょっとしたらそのようなことじゃないかと。僕もそんな気がします。」

私もそんな気がします。私も幸せとはそのようなものだと思います。幸せとは、今日の奨励のタイトルにもさせていただいたように、「夢の中に、すなわち何かに夢中になって取り組むこと」じゃないかと思います。

ただ、高志自身、公演の準備に取り組んでいた時にはそのような実感はできなかったわけで、夢中になっているときになかなか自分が幸せであるとは実感できないことが多くあります。

ある程度のお金も必要でしょう、健康はもちろん重要です。でも、お金そのものは人を幸せにしてくれません。何でもいいから夢中になって取り組むこと、そのような夢中になって取り組むことを持つことが人生にとってとても重要なことであると思います。

この場にいらっしゃる大学生のみなさんはたぶんいまその実感はないかもしれませんが、きっと後から振り返った時、研究でもゼミのことでもサークルでもアルバイトでも旅行でも恋愛でも、夢中になって取り組んだことが、楽しかった、幸せだったと実感できることだと思います。そして夢中になって取り組むことが大学生活で最も重要な使命であるとすら思っています。他人からはどんなにつまらなく見えても自分がのめりこんで取り組めるものを探すことことの重要性はいつら強調しても強調しすぎることはありません。

そして、なぜ夢中になって何かに取り組むことが幸せなのか、その意味もこの映画の中で示唆されています。河野さんが映画の終わりの方で高志達に語りかけます。

「長い間、このような仕事をしているけれど、若い人の可能性って本当に素晴らしいのね。今回もみなさんから教えられたわ」

そうなんですね、夢中になって何かに取り組むとき、知らず知らずのうちに自分の可能性が引き出され、そして自分が成長してゆくのでしょうね。背が伸びている時、自分ではあまり実感がないけれど、ある時振り返って、背が伸びたね、と分かります。夢中になって何かに取り組むとき、本当に自分が成長するのでしょうね、そして自分が成長できていることが自分が幸せだと感じることなのだと思います。

わたしは、今年で教師生活通算25年を迎えます。河野さんのように、「長い間、このような仕事をしているけれど、若い人の可能性って本当に素晴らしいのね。今回もみなさんから教えられたわ」

と3月の卒業式で学生のみなさんに言えるように、若い学生諸姉の可能性を一層引き出せるような教師になっていきたいと思っています。

みなさんももうもっていらっしゃると思いますが、何でもいいですから、「夢中になって取り組むことのできるもの」に取り組んでいきましょう。探してみましょう。

(2007年5月15日、今出川キャンパス 栄光館にて奨励)

(2007. 5.15)

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