集大成へ

秋学期が今日からはじまりますが、みなさんはどのような夏休みをお過ごしになったのでしょうか。このようにいう と、何か特段すばらしい夏休みであったことを暗に期待しているようですが、何もしないボーとした夏休みであってもそれはそれでいいのではないか、と思いま す。わたし達は、つい、昨日よりも今日の方が、今日よりも明日の方が素晴らしい日々であることを期待してしまいます。また、大学生の皆さんにとっては、自 分の専攻している分野において、日々成長できることを期待してしまいます。しかし、わたし達の長い人生はそのような、丁度赤ん坊が日に日に成長するよう に、目に見えて成長が見えるような、絵に描いたようなサクセスストーリーばかりではないとおもいます。

私 もまたこの夏休みには多くの課題を持って入ったのですが、実際夏休み中にどれだけそれが達成できたか、と問われると、半分くらい、としか、いや半分以下と しか返答できないかもしれません。実際のところ、私は今取り組んでいる論文の執筆を大方済ませてしまいたいと意気込んで8月を迎えました。論文を書こうと 思うとアテネオリンピックが気になったり、集中できないことも多く、なかなか論文を書き上げる事はできません。よく学生諸姉には、がんばって書きなさいと 指導していますが、自分自身が実際に書く段になると大変です。

そのような悶々とした日々を過ごしている中で、9月6日から一週間、群馬県榛名町で実施された宗教部主催ワークキャンプに参加してきました。私が滞在したのはそのうちほんの二泊三日でしたが、いろいろなことを考えさせられる、また感じさせられる貴重な三日間でした。

群 馬県に初めて足を踏み入れたということもよかったのかもしれません。上越新幹線に初めて乗ったことも、また新島先生の旧宅を訪れることができたこともよ かったのかもしれません。ワークキャンプでは、参加した学生のみなさんが生き生きと毎日を過ごし、そしてその毎日を時に涙も交えながら振り返る姿をみて、 このワークキャンプが学生のみなさんに与えている大きなインパクトを感じました。

そ のような中で私にとっては理事長の原慶子先生やエンジェルホーム園長の長坂としや先生にお会いできた事は幸運なことでした(原先生は11月にこの同女に来 られますので先生の話をお聞きする機会があると思います)。長坂としや先生には夜の8時から1時間半に渡ってエンジェルホームでの入園者のみなさんとの交 流を通して考えられたことなどについて、お話いただきましたが、そのお話を通して、いままでの忙しい生活の中で私自身も忘れかけていた大切なことを思い出 したような気がしました。

それは「すべてのことに意味がある」ということ です。老人福祉施設に入居している方々はもちろんのことながら高齢者であり、かならずしも明るい未来が待っているわけではありません。そう遠くない将来に 死と直面することになります。しかし、考える基準を私達において発する問いこそ間違っているのではないか、長坂さんはいいます。つい、私達は、生きている 事を効率的な意味に置き換えようとしてしまいますが、もともと生きているということは、何かの為に役に立たなければいけないわけではなく、生きている事そ れ自体に意味がある、と長坂さんはいいます。これは、理論ではなくて長坂さんの生活から生まれた実感であると思います。お話を聞いていて何かこころにスト ンと納得するものがありました。

人生うまくいかないと、また大学生活でも うまくいかないと、何のためにこんなことをしているんだろう、と思ってしまう事があります。しかし、私は、長坂さんのいうように、「一日一日、一瞬一瞬 を、精一杯生きる事」が大切であり、今は、意味がないと思っている事にも、あとから考えてみると重要な意味があることが実に多く思います。

自 分が自分らしくあるということほど難しい事はない、また、自分をいつも好きであることも困難であると思います。この夏の私自身の論文の進展を見ても、私自 身についてそう思います。自分に憤慨したり、自分に嘆く事も時に、必要だと思います。ただ、悲しみや辛さは幸せにつながっている、という楽観的な信念は持 ち続けたいものだと思います。幸せになる努力、これは難しいようですが、現在目の前にある大小の困難に立ち向かう事には必ず意味があると思う事、すなわ ち、生きていいる中で出会う、起こるすべてのことには、自分を成長させてくれる何らかの意味があると信じる事が、生きていく上では重要なことになるのでは ないか、と思います。

長坂さんと一緒にみんなで、加藤登紀子の「いきて りゃいいさ」という歌を歌いました。「喜びも悲しみも立ち止まりはしない、喜びも悲しみも立ち止まりはしない、いきてりゃいいさ、いきてりゃいいさ」。様 々な喜びと困難がこの秋学期も待ちかまえていると思いますが、「一日一日、一瞬一瞬を生きている精一杯生きる事」が、最終的に私達に幸福をもたらしてくれ る秘訣なのかもしれません。

今日のお話のタイトルは「集大成へ」としまし たが、4回生のみなさんは、大学生活の集大成ともいえる卒業論文、卒業研究の仕上げにかかる秋学期だと思います。1-3回生のみなさんは、春からの学習・ 研究のまとめをする時期に当たります。また、10月末にはスポーツフェスティバルや秋季リトリートも控えています。学生のみなさんも、私達教員もそれぞれ 忙しく走り回る毎日になりますが、「困難も、苦労も、幸せにつながっている」という楽観的な気持ちを持って、汗と涙を流しながらこの秋学期を楽しみたいも のです。

今日は秋晴れの爽やかな一日になりそうです。お互いの健闘を祈念して今日のお話をおわりにします。

(2004年10月1日、今出川礼拝堂における2004年度秋学期最初の礼拝より)

(2004. 10. 1)

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