オックスフォード通信(65)Social media

本日の質的データに関するセミナーはFacebookなどのソーシャルメディアの利用についてでした。ケニア出身の博士課程3回生のCさんの発表でした。

本題には関係ないのですが、本日はプレゼンターがアフリカ出身ということもあるのか、人種的バランスは白人系、黒人系、アジア系といいバランスでした。通常は白人、しかも恐らくイギリス人にチラホラ香港、中国、韓国といったアジア人が含まれることがあるくらいで、今日のようなケースははじめてのことです。

参加者のリクルートはFacebook、実際のインタビューはWhatAPPsを使っておこない、イギリスに居ながらにしてしかも費用は格安で(参加者には多少の謝礼を出していたようです)行うことができるというメリットがあります。

なるほどと思います。ただ、質疑にもなっていたのですが、データの信頼性は?という問題は残りますね。ただ、質問紙法(アンケート)にしても対面型のインタビューにしても信頼性に問題がないことはないですね。オックスフォードで社会科学系のセミナーにいろいろと参加させて頂いていますが、傾向としては質的研究データ収集に傾倒しているように思います。主として博士論文や研究プロジェクトの発表が多いので当然なのかもしれません。

ただ、昨日びっくりしたのは、対象がアカデミックライティングで実際の研究参加者は Shadow Scholar、すなわち履歴書やアカデミックペーパーのゴーストライターなんですね。ケニヤでは失業率も高く、職にありつくには英語でパリッとした履歴書が必要となるそうです(これは日本でも同じですが、ほぼ日本語で書いているところが違いますね)。一方、大学を出ても定職につくとは限らずそこで代わりの仕事又は副業としてこのようなことが起こりえるのですね。

今回の研究で利用したWhatsappは日本ではあまりなじみのないものかもしれません。Line全盛なので他のアプリは考えませんが、世界的には特にヨーロッパやアフリカでよく使われているアプリが異なることも面白いところでした。(2018.5.31)

★今回の教訓:これからはSNSも利用した研究が多くなっていくのか。Facebookも研究に使われる時代か。明日から6月。
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オックスフォード通信(64)Who are native English speaking teachers?

昨日の応用言語学セミナーは英語のネイティブ・スピーカーが議論の対象でした。

オックスフォード大で多くのセミナーに参加しながらもやはり一番興味を持って話を聞くことができるのが応用言語学セミナーであることは間違いありません。

オックスフォード大は近隣の大学からふんだんに講師を招きます(それだけのネームバリューと実際の資金があるのでしょう)。このセミナーの講師はバーミンガムのアストン大学の先生。Teacher Beliefの研究を中心にされているようです。話し方も聞かせる話し方で最初に近くの人と短いディスカッションをさせるあたりさすがにTeacher Educationの研究家という印象を与えます。

主としてネイティブスピーカー (NESTs: Native English Speaking Teachers)の立場から各国現地の先生LETs(Local English Teachers; 日本ではJTE、Japanese Teachers of English、どこかの学会名と同じですね)との関係について主としてインタビューデータを元にした分析結果を報告されていました。

いろいろと興味深い点がありました。

1. NESTsの定義:英語を母語としているだけでなく、各国の語学学校や招かれる小中高等学校では「白人、男性」という暗黙も前提があるようだ。逆に、「女性、有色人種」という場合特にNET枠に入れてもらえないことがある(ナイジェリアの男性の例を紹介されていました)。この部分は重要かつ深刻であるように思います。日本においてもこの傾向は特に強いように思います。アジア人で英語が母語の場合にも例えば語学学校ではNETの教員としては採用されないと思います(実際にそのような例を知っています)。ここで見えてくるのは各国における作られたNETのイメージして及び英語=北米や欧米といった先進国、憧れの対象というものがあると思います。一方で意図的ではないにせよ、その傾向を扇動または煽ってきたイギリスをはじめ北米諸国の責任も大きいと思います。

2. NESTsとLETsの連携:ここが議論の中心でした。NESTsに授業に丸投げされる又はその逆で部分的にしか授業に関わることができないというもの。少しびっくりしたのはNESTsがLETsが授業の構成を考えられないと思っていること。また両者に十分なコミュニケーションがない事です。この研究が重要なのはもちろん日本も含まれているのですが、調査対象が全世界であることです。この辺りがBritish Councilのプロジェクトとして実施していることの強みであると思います。

ただ、どちらかというと(当たり前ですが)NESTs側からの議論で「なぜそのような状況に陥っているのか」という分析が少ないように思いました。日本のALTの状況からすると、部分的jにしか授業を担当できないとか授業が逆に丸投げされてしまうのは、学校に常駐せず一人のALTが多くの学校を掛け持ちで担当しているという外的な要因に寄るところです(このことについて講演の後で講師の方と話す機会がありました)。

結論として、NESTs側からはmulti-linguistic, multi-cultural understanding が必要であり選考に当たってもスキルや能力ベースにすべきであるというのは全く納得できるところでした。ただ問題なのはこれから日本においても小学校からの英語教育の本格的開始を控え多くのNESTを採用しようとする機運の中でこのような正当な方法の選考が本当になされるのかという点は気になるところです。

改めてNESTの条件は?LETの条件は何か? と考えるいい刺激を与えてもらったように思います。(2018.5.30)

★今回の教訓:白人・北米信仰が最も強いのが日本だろう。厄介なのはそれが英語を学ぶ強い動機になってしまっているところ。その部分を取り払っても日本人は英語を学び続けようと思うだろうか。少なくとも変な憧憬はなくなるだろう。それはいいことかもしれない。
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オックスフォード通信(31)Oxford University が世界一の秘密(2)Open Seminar

オックスフォードに来て、何がこの大学を世界一にしているのだろうと考えています.

秘密の2つめが分かりました。オープンセミナーという公開講演会と様々なランチタイムセミナー(私が興味を持っているのは応用言語学セミナー、質的研究セミナー、量的研究セミナーです)が開催されていることです。昨日は昼1つ、夕方1つ参加してきました。

公開セミナーというので大々的なものかと思っていたら、昼は5名、夜のセミナーでも10名弱の少人数です(入った瞬間に、抜けられないなあという絶望感を感じますね)。昼はハンガリーでの自立(autonomy) 意味についての大学院博士課程3回生の発表、夜は教室環境のデザインについてのプレゼンテーションでした。私の研究と直接関係ないのですが、全然関係ないこともなく、聞いている内に何か自分の研究に関連付けて考えられるようになるのが不思議です。

学内で気軽にこのような知的な交流の場が主として教員に与えられている(ほとんどの、特に夜は先生)のは昨日の話のトピックにあったように、Stimulation(刺激)を与え、そこから個人化(Individualization) され、それがOpenness(公開性)と相まって、 Naturalness(自然)となっているのでしょう。Clever classroom ならぬ Clever univeristy environmentという感じがします。(2018.4.27)

★今回の教訓:案外どこの国のどこの大学でもこのような環境は作れるのかもしれない。教員、研究者が忙しさにかまけて、たこつぼ化(自分の領域だけに没頭してしまう)してしまうことを避ける方策はあるだろう。その意味では同志社女子大学英語英文学会が設立60周年に向けてすたーとした、Special Lecture Series(2018年3月スタート)は軌を一にするものだろう。